Bluetooth対応のモニターヘッドホン「ATH-M50xBT2」を購入して、しばらく使い倒してみた。結論から言うと、これは本当に“全部入り”の良機種である。
有線時代の定番モニターヘッドホン「ATH-M50x」をベースに、Bluetooth接続機能やLDACコーデック、長時間バッテリー、有線接続も可能な柔軟さまで追加された「これでいいじゃん!」と思わせてくれる完成形モデル。しかも価格は2万円台というから、正直コスパがおかしい。
作業用にも、音楽鑑賞にも、軽い編集にも、そしてテレワークの通話にも全部対応できる万能っぷり。今回はそんなATH-M50xBT2を実際に使ってみて、良かった点・惜しかった点を正直にレビューしていく。
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ATH-M50xBT2のスペック概要|全部入りの“ちょうどいい”仕様

ATH-M50xBT2の付属品は、有線ケーブル・充電用USB-Cケーブル・携帯用ポーチの3つ
項目 | 内容 |
---|---|
型式 | 密閉ダイナミック型 |
ドライバー径 | φ45mm |
出力音圧レベル | 99dB/mW |
再生周波数帯域 | 15Hz〜28,000Hz |
インピーダンス | 38Ω |
通信方式 | Bluetooth 5.0 |
対応コーデック | LDAC, AAC, SBC |
連続再生時間 | 最大約50時間(SBC使用時) |
充電時間 | 約3.5時間 |
質量 | 約307g(ケーブル除く) |
充電端子 | USB Type-C |
付属品 | 有線接続ケーブル(両側3.5mmミニプラグ) / USB Type-Cケーブル(A→C) / 携帯ポーチ |
その他 | 有線接続可(3.5mmミニプラグ) / ビームフォーミングマイク内蔵 / 専用アプリ対応 |
正直このスペック表を見ただけでも「これで2万円台?」と思ってしまうレベルで、欲しいものがちゃんと揃っている。特にLDAC対応やUSB-C採用、50時間バッテリーは見逃せないポイントだ。
また、Bluetoothヘッドホンやイヤホンにおいて重要視される内蔵DACは一般的には非公表であることが多い中、AKM社製Hi-Fi DAC&ヘッドホンアンプ(AK4331)を採用を銘打っているのも高評価できそうだ。
なにより、筆者もそれなりに探したのだが、国内メーカーのLDAC対応のヘッドホンとなると、ソニーのWH-1000XM5あたりしか見あたらないのだ。たしかにWH-1000XM5の音質や使い勝手、そして強力なノイキャン性能などを考慮すると、同機が高い評価を受けるのも頷けるが、ATH-M50xBT2の2倍近いお値段をどう考えるかだろう。
ATH-M50xBT2 サウンドレビュー|ちょうどいい“リスニングモニター”。ほどよい中低域の密度感と空間表現力
ATH-M50xBT2の最大の魅力は、Bluetooth接続でありながらもモニターヘッドホンらしい定位感と音像の明瞭さをしっかり維持している点にある。いわゆる「Bluetooth=妥協」という先入観は、このヘッドホンを使っていると良い意味で裏切られる。24時間ほどエージングしてからスマートフォンとLDAC接続で試してみたのでレビューしたい。
まず音を鳴らして真っ先に感じたのは、中低域の密度感と張りの良さ。45mm径のドライバーが生み出す低音は、必要以上に膨らむことなく、非常にタイトで歯切れが良い。それでいて、EDMやロックを聴いた際には身体の芯に響くような力強さがあり、リズムのグルーヴをしっかり感じさせてくれる。ベースの輪郭も明瞭で、ドラムとの絡みもしっかり分離されて聴こえるので、ビートの乗りが非常に気持ち良い。
中域には適度な厚みがあり、ボーカルが前に出すぎず、かといって埋もれることもなく、ミックス全体の中で自然に存在感を示してくれる絶妙なチューニング。このバランス感覚はさすがモニター由来の設計というべきだろう。ピアノやアコースティックギターの響きも滑らかで、ジャンルを問わず“音楽全体のまとまり”を感じさせてくれる。音の押し引きが非常にナチュラルで、長時間のリスニングでも耳が疲れない点も好印象だった。
高域については、極端に伸びるわけではないが、刺さらず、きつさがないという点では非常に優秀。ハイハットやシンバルはサラッと耳に抜けるようなニュアンスで、強調感がなく、それがまた全体の自然さを保っている要因となっている。特に、SBCやAACよりもLDAC接続時にはこの高域の空気感や余韻がしっかりと再現され、音場の奥行きが一段階広がったように感じられる。Bluetoothでこれだけの情報量を感じられるのは、LDACの恩恵に他ならない。
定位感に関しても、さすがM50x系統というべきで、センターの音像はガッチリと据わっており、その両脇に楽器がきれいに展開される。ステレオイメージはワイドで、リバーブの広がりや残響のニュアンスも十分に感じ取れる。ライブ音源や室内楽など、空間の“空気ごと録った”ような音源でもその臨場感はしっかりと伝わってきた。
ATH-M70xとの比較|精密さではM70x、だが“聴いて楽しい”のはM50xBT2
ここであえて、筆者も愛用しているオーディオテクニカの上位機種ATH-M70xと比較してみたい。M70xは暖色系ではありながらも明らかにプロフェッショナル用途を前提とした作りで、音の粒立ちや倍音の伸び、そして音像のフォーカスの鋭さにおいては、やはり一段上だと感じた。特に中高域の情報量や、左右だけでなく前後の空間の奥行き表現においては、M70xの繊細さが際立っている。
しかしその一方で、M70xは「冷静なリスニング」を求められるヘッドホンでもある。モニターとしての性格が強く、すべての要素をフラットに、正確に描き出す代わりに、音楽の“熱”や“ノリ”といった主観的な魅力がやや抑えられて感じられることもある。これはアコースティック系を聴いたときは顕著だと感じる。
それに対してATH-M50xBT2は、モニター的な素直さを保ちつつも、中低域にわずかな膨らみと厚みを与え、音楽のダイナミズムや高揚感をしっかり感じさせてくれる。特にバンドサウンドやビート感の強い音楽との相性は抜群で、「理屈抜きで楽しく聴ける」という意味では、むしろM70xよりも上だと感じるシーンも少なくなかった。
加えて、Bluetooth+LDAC+有線対応+50時間バッテリーという多機能さを兼ね備えている点で、M50xBT2は「音質+使い勝手」のバランスにおいて圧倒的な優位性を持っている。M70xが「音の精度」を突き詰めたモデルであるのに対して、M50xBT2は「日常的に音楽を楽しむための完成形」といった立ち位置だ。
総括|プロフェッショナル譲りの信頼感に、日常で使える“快適さ”が融合
ATH-M50xBT2のサウンドは、間違いなく“モニター系ヘッドホン”の血筋を感じさせるものでありながら、同時にBluetoothという日常的なシーンでの使いやすさに全振りしすぎていない、絶妙なチューニングが施されている。
M70xのような精密さは求めないが、かといって安易に味付けされた「ドンシャリサウンド」には飽きている。──そんな人にとって、ATH-M50xBT2は「ちょうどいい音質」を提供してくれる存在だと思う。オーディオテクニカは昔からこうした絶妙な音作りが本当にうまい。
音楽を“ただ聴く”のではなく、“ちゃんと聴きたい”というリスナーにこそ刺さる一台。それが、このヘッドホンの本質だ。
その他|アプリ連携とマイク性能も地味に優秀
その他の細かいところを挙げていくと、専用アプリ「Connect」が直感的に使いやすかった。イコライザー調整やボタンカスタマイズ、左右バランス調整などが可能。プリセットも複数あり、ジャンルによって音を切り替えるのも簡単だ。
さらに、マイクも内蔵していて、リモート会議や通話でも使える。充分なテストは行っていないが、ビームフォーミング技術のおかげか周囲のノイズもある程度抑えてくれる感はあった。ヘッドセットマイクがニョキッと伸びているわけではないので、テレビ会議に使ってもあまり違和感は与えないと思う。
2台同時にワイヤレス機器へ接続できるマルチポイント機能も見逃せない。例えばスマートフォンとPCにそれぞれペアリングしておけば、スマートフォンで音楽を聴いていて、急にPCでテレビ会議などが発生しても慌てる必要がない。
LDACコーデックは仕組み上、どうしても音の遅延が発生しやすいため、FPSゲームなどをやるときは低遅延モードに切り替えることも可能。
「音楽用」「ゲーム用」「仕事用」が同居できるのは本当に便利で、これ1台で仕事とプライベートをカバーしてくれる万能感がある。
ATH-M50xBT2のリケーブルは可能?バランス化できる?
オーディオに詳しい方なら、ヘッドホンケーブルを交換するリケーブルも試してみたいと考えるだろう。ATH-M50xBT2のリケーブルケーブルはもちろんAmazonなどで購入することが可能だ。
ATH-M50xBT2の有線ケーブルの両端は一般的な3.5mmの3極プラグ(いわゆるステレオミニピン)だが、「ATH-M50xBT2対応リケーブルケーブル」と明記されているか、実績のあるケーブルを選びたい。理由は、本体側のジャック穴が小さいからだ。適合する細身のケーブルである必要がある。
ATH-M50xBT2に使えるリケーブルケーブルは、中華メーカーからも格安品が売られているが、コストを抑えて付属ケーブルからの音質アップグレードを期待するなら、MOGAMI 2893 ステレオミニケーブルをお勧めしたい。
また、ATH-M50xBT2は配線内部の構造上、いわゆる「バランス化」はできない。
ベースモデルと言える(有線接続専用な)ATH-M50xに対応した4.4mmバランスケーブルはAmazonなどで売られているが、そのケーブルは本機ATH-M50xBT2では使えない。そもそもATH-M50xの本体側のアナログジャックは2.5mm(ATH-M50xBT2は3.5mm)で、物理的に太さが異なるのだ。
なお、SONY MDR系(1A/1000XM3/XM4/XM5/MV1など)用の4.4mmバランスケーブル(3.5mm TRRS→4.4mmバランス)の一部にて、ATH-M50xBT2対応を謳って販売されているものが見受けられるが買わない方がいい。たしかにATH-M50xBT2でも使える(らしい)のだが、バランスでは使えずシングルエンドで機能する。どうしても4.4mmバランス出力のイヤホンジャックと繋ぎたい人もいるだろうが、こうした使い方をすると故障の原因にもなりかねないため、筆者はお勧めしない。
どうしても4.4mmバランスケーブルを使って有線接続で楽しみたいなら、リケーブルでバランス化が可能なATH-M50xの購入を検討してみてはいかがだろうか。
まとめ|LDAC対応で音質も妥協なし。有線級の信頼感と“ちょうどいい”が詰まった万能Bluetoothヘッドホン
ATH-M50xBT2は、「モニター系ヘッドホンをBluetoothで」という一見矛盾しそうな命題を、極めてバランス良く実現している稀有なモデルだ。
まず、音質面についてはすでに述べた通り、Bluetooth接続でここまで定位・解像度・帯域バランスの取れたサウンドは、正直かなり珍しい。Bluetoothヘッドホンは多機能化の一方で「音はまあまあ」という製品も多い中、本機は音の真面目さがちゃんとある。音楽を本気で聴きたい人が満足できる仕上がりになっている。
特にLDAC対応は大きく、スマートフォンやDAP(デジタルオーディオプレイヤー)との組み合わせ次第で、有線に近い情報量をワイヤレスで享受できる。CD音源やハイレゾ音源を日常的に楽しんでいるリスナーにとって、この違いは無視できないレベルだ。Bluetoothだからといって“聴こえていればいい”で済まさない姿勢に、オーディオテクニカの本気度を感じる。
また、バッテリー性能も特筆すべきだ。最大50時間という長時間再生は、実際に使ってみると想像以上に快適だ。しかも急速充電にも対応しており、忘れていても15分で3時間再生できる“保険”があるのも地味にありがたい。
そして、有線接続への対応。これは実際に編集作業などに使っているとそのありがたみがよく分かる。Bluetoothでは避けられない遅延も、有線にすればゼロになる。バッテリーがカラでも使える。作業時は有線、移動や家事のときは無線、というように状況に応じた柔軟な運用ができるのが、他のワイヤレス機と大きく違う点だ。
さらに、通話品質やマイク性能、アプリ連携などもぬかりなく、音楽用途だけでなく、テレワーク・リモート会議・オンライン授業といった日常の“音を扱うシーン全般”に対応できる。この多機能性も、地味ながら非常にありがたい。
もちろん、アクティブノイズキャンセリング(ANC)が非搭載である点は、人によっては物足りなさを感じるかもしれない。しかし、その代わりに得られているのは、音質の自然さ、耳への負担の軽減、機械的な処理を挟まない“素直な音”である。このトレードオフをどう捉えるかは用途次第だが、コストダウン効果も含め、筆者としてはむしろ好ましい選択に感じた。
価格も見逃せない。2万円台前半(時期によってはそれ以下)という価格で、これだけの機能と音質を備えたヘッドホンは、正直かなり限られている。同価格帯では“機能だけ盛ったなんちゃってハイエンド”が多い中で、ATH-M50xBT2は「ちゃんと作り込んである」ことがはっきり伝わるモデルだ。
こんな人におすすめ
-
ワイヤレスでも“ちゃんとした音”で音楽を楽しみたい人
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Bluetoothと有線の両方をシーンに応じて使い分けたい人
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通勤・作業・編集・会議まで、一台で完結させたい人
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ANCよりも、自然な音質・快適な装着感を重視する人
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M50xやM70xに興味があるが、もっと日常使いしやすいモデルを探している人
惜しい点:ノイキャンなし。でもこれはこれでアリ
唯一の弱点を挙げるとすれば、アクティブノイズキャンセリング(ANC)が非搭載である点くらいだろうか。これは冒頭で挙げたソニーヘッドホンとの大きな違いでもある。
電車内などの騒がしい環境で実際に使ってみたところ、若干外音が気になる場面もある。ただし、耳を包み込むようなイヤーパッドの密閉性は高めなので、ちょっとした騒音なら物理的にシャットアウトできる。ANC特有の耳の圧迫感や音質の変化がないという意味では、むしろ好ましいという人もいるだろう。
最後に
ATH-M50xBT2は、“ど真ん中”の製品だと思う。
派手な機能もなければ、極端な個性もない。でも、音質・機能・使いやすさ、そのすべてにおいて「これがあれば十分」と言える安心感がある。
Bluetoothヘッドホンというジャンルが成熟してきた今だからこそ、こういう「過不足のない、実直な良機種」の価値がより際立つ。迷ったら、まずはこれを選んでみてほしい。きっと、使い込むほどに「これでよかった」と思えるはずだ。筆者は買ってよかったと思った。